業務用エアコンの室外機は家庭用と何が違う？設置方法や種類を解説

業務用エアコンは、家庭用に比べてパワフルかつ広い空間での空調に適しているなどの違いがありますが、性能だけでなく室外機も異なることをご存じでしょうか。室外機が設置できないと、業務用エアコンの取り付けも制限されてしまうため、室外機について知っておくことが大切です。

今回は、室外機の種類や設置方法を解説します。

業務用エアコンにおける室外機の役割とは

業務用エアコンは家庭用エアコンと異なり、広い部屋の空調を整えるために室内機・室外機ともに強いパワーを要します。部屋の空気を効率的に暖めたり冷やしたりするためには、メインとなる室内機だけでなく室外機も設置場所に適した種類を選ぶ必要があるでしょう。ここではまず、業務用エアコンの室外機の役割を解説します。

・室外機の役割

室外機には、冷媒ガスを圧縮または減圧して温度を変化させたり、外気に熱を放出したり外気から熱を取り込んだりする役割があります。そのため、冷房時には冷媒ガスを減圧して室内にこもった熱を外に逃し、暖房時には冷媒ガスを圧縮して室内に熱を送り込むことが特徴です。室外機がなければ室内の温度を調節することはできないため、重要な役割を担っていると言えるでしょう。

・業務用エアコンの室外機の種類

＜上吹き＞

上吹きタイプの室外機は天井部分にファンが付いており、熱交換を行った後の空気を上部に逃します。周囲に障害物があっても空気の放出は遮られないため、ビルの屋上など狭いスペースで密接して設置する際によく使用されるタイプです。大容量形やマルチ形の業務用エアコンは、上吹きタイプが多い傾向にあります。

＜前吹き＞

前吹きの室外機は、家庭用エアコンでもよく使われているタイプです。室外機の前面にファンが付いているため、正面に空気を放出するスペースを確保して設置する必要があります。小型の業務用エアコンでは、前吹きタイプが一般的です。

室外機の設置方法

室外機にはさまざまな設置方法があるため、以下の設置方法を参考にしながら設置したい場所に合わせた方法を選びましょう。

・直置き（地面置き）

業務用エアコンだけでなく家庭用エアコンでもよく用いられる設置方法で、直接地面に置いて設置します。コンクリートブロックなどの足場に固定すれば設置が完了するため、最も手軽な方法と言えるでしょう。室内機と近い距離に設置するケースが多く、空調効率の向上も望めます。

・屋根置き

2階以上の建物で、ベランダやバルコニーなど室外機の設置スペースがない場合に用いられる方法です。屋根に専用の台を取り付け設置して、その上に室外機を設置します。室外機が直射日光や雨などにさらされることになるため、空調効率にも多少影響を受けてしまう可能性があるでしょう。しかし、室外機を置くスペースがない場合でも、室内機と近い距離で設置できることがメリットです。

・二段架台

専用の架台の上に、室外機を上下に並べて設置する方法です。1台分のスペースに2台まとめて置けるため、省スペースで設置できることがメリットです。ただし、下段は上段よりも通気性が悪くなってしまう傾向にあるため、なるべく下段の室外機との間に空間を確保しましょう。また、上段の室外機の落下を防ぐために、しっかり固定しておくことも大切です。

・壁掛（壁面架台）

専用架台を壁に取り付け、室外機を壁に固定して設置する方法です。2階以上の部屋で屋根やベランダがない場合でも、業務用エアコンの導入が可能になります。しかし、専用架台の取り付けには設置工事が必要であり、壁に強度がない場合は設置できない可能性もあるため、注意が必要です。また、設置工事には10,000〜15,000円ほど費用がかかってしまう点も考慮しておきましょう。

・天吊

専用架台を天井に取り付け、軒下に吊るして設置する方法です。床に室外機を置くスペースを確保する必要がなく、空間を有効活用できるメリットがあります。しかし落下の危険も伴うため、安全性を考慮して軽い室外機を選ぶのがおすすめです。

・屋上設置

上層階に室外機を置くスペースがなくてもエアコンを設置できますが、配管を伸ばすための延長費用や、屋上へ室外機を搬入するための費用が別途かかる可能性はあるでしょう。室内機と室外機との距離を近づけられますが、直射日光や風雨の影響を受けることで空調効率が低下しやすくなる可能性もあります。

業務用エアコンの室外機のみを交換することはできる？

業務用エアコンの空調効率が落ちてきた場合は、交換時期が近づいていると言えます。その場合、室内機と室外機の同時交換ではなく、室外機のみを交換することは可能なのでしょうか。

・室外機のみを交換することはできない

基本的に室外機のみの交換はおすすめできません。室内機と室外機は連動して作動しているため、室外機のみを交換した場合は正常に稼働しなくなる可能性があります。例外として、室内機と互換性のある機種であれば稀に交換できるケースもあるでしょう。

・室外機が故障したらどうする？

＜室内機とセットで交換するのが一般的＞

室外機が故障してしまった場合は、前述の通り室内機とセットで交換するのが一般的です。エアコンはもともとセット交換することを前提に作られているため、たとえ新しい室外機に互換性があったとしても、正常に作動する保証はありません。室外機のみが故障した場合でも、室内機とセットで交換するのがおすすめです。

＜故障の状態によっては修理の依頼＞

故障した室外機が修理で直せる場合もあるため、使用年数がそれほど経過していない場合は一度業者に修理が可能か見てもらうとよいでしょう。故障箇所にもよりますが、修理が可能であれば交換よりもコストを抑えられる可能性があります。

室外機の設置に適している場所はどこ？

業務用エアコンの消費電力を抑えながら空調効率を高めるためには、室外機の設置場所にも配慮が必要です。室外機の設置場所に迷っている方は、以下を参考にしてみてください。

・室内機の近く

室内機と近い距離に設置することで、効率的に空調を整えられます。なぜなら、室内機と室外機をつなぐ配管の長さで送られる空気の温度が変化するため、空調効率が落ちてしまうからです。ただし、必要な配管の長さや高低差はメーカーによっても異なります。設置の際は、業者に相談してください。

・通気がよい場所

通気性をよくすることで、室外機に熱がこもることを防げます。通気性が悪いと室外機は熱をもちやすくなるため、夏場などは冷却効果が落ちる傾向にあります。また、電力消費量も増えるでしょう。室外機は機種によって異なる据付スペースを確保して、通気性に配慮しながら設置することが大切です。

・地盤が固く水平になっている場所

安定性のある固い地盤で、水平な場所に設置することも大切です。水平でしっかりした土台に業務用エアコンの室外機を設置することで、風や振動による室外機の転倒を防げます。また、空間に少し余裕をもたせると作業スペースが確保され、メンテナンスや修理などの作業もしやすいでしょう。

・天候の影響を受けにくい場所

直射日光や雨が当たらない場所を選んで、業務用エアコンの室外機を設置することも大切です。直接天候の影響を受ける場所は直射日光による熱がこもりやすくなるだけでなく、雨や雪などによって室外機の劣化を早める原因にもなるでしょう。なるべく屋根のある場所などを選び、直射日光や雨にさらされないよう配慮してください。

まとめ

業務用エアコンの室外機は、設置場所に合わせて吹き出し口の方向を選ぶことが大切です。また、室内機となるべく近づけて設置することで、省エネや空調効率の向上にもつながります。設置場所のポイントに配慮しながら適切な場所に設置し、業務用エアコンのランニングコストを抑えましょう。