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フロン排出抑制法による業務用エアコンの点検義務について解説

業務用エアコンを使用している場合、家庭用とは異なり、フロンガスについて注意が必要です。具体的な内容はフロン排出抑制法によって定められており、業務用エアコンを使用している企業であればどこも無関係ではありません。

今回は、フロン排出抑制法がどのようなものかについてのほか、どのような対策をすべきかを具体的に解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

フロン排出抑制法とは

まずはフロン抑制法の内容について解説します。

業務用エアコンを使用している方は必ず確認してください。

 

・そもそもフロンとは?

フロンとはフロンガスのことで、炭素と水素を主にした化合物です。ハロゲンを多く含む人工的なガスで、1920年ごろに開発されました。人体に無毒で、不燃性、科学的安定性に優れた性質が特徴で、エアコンを始めとする空調機以外にも冷凍庫や冷蔵庫にも使用されています。多くの製品に使われており、誕生以降は急速に普及しましたが、1970年代にオゾン層破壊が深刻な問題になり、原因がフロンガスにあるとされました。フロンは二酸化炭素に比べて数十から数万倍もの温室効果があるとされており、二酸化炭素の削減よりもフロンの削減は地球温暖化防止の効果が高いとされています。

 

・フロン排出抑制法とは︖

上記でも解説したように、フロンガスは排出されるとオゾン層に悪影響を及ぼすことがわかりました。地球温暖化の深刻化や環境保全の観点から、2001年には「フロン回収破壊法」が制定され、フロンガスを使用する機器の廃棄時にはフロンガスを回収・破壊することが定められ、2015年4月には「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」へと改正されます。この「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」の略称が「フロン排出抑制法」です。

フロンガスを使用する際に適切な廃棄処理ができておらず、フロン類の回収をしていない場合は、罰金等の罰則が科されます。

 

・フロン排出抑制法ができた背景

業務用エアコンを含め、フロンガスが使われている機器の製造や回収などに関して整備は進んだものの、回収率は38%でした。残りの62%は経年劣化や整備不良による漏えいとされており、この62%を低減させるために設けられたのがフロン排出抑制法です。

当初はフロンの回収率を2020年には50%、2030年には70%まで引き上げることを目標にしていましたが、環境省の発表によると令和3年度における廃棄時のフロン類回収率は推計値で約40%でした。

 

・管理者と対象製品

<管理者>

原則として、所有権を有する者(所有者)が管理者となり、該当設備の責任を負います。また、例外として契約書等の書面で保守・修繕の責務を所有者以外が負うことが記載されている場合は、その者が管理者です。

管理者の定義

  • 自己所有・自己管理の場合…所有者
  • リースやレンタルの場合…日常的に使用、管理している人
  • 賃貸など他人所有・他人管理の場合…ビルのオーナー(テナント利用者はでない)

 

<対象製品>

業務用エアコン以外には冷蔵庫・冷凍庫なども該当しますが、今回は業務用エアコンのみについて紹介します。

  • パッケージエアコン
  • ビル空調用ターボ冷凍機
  • 空調用チラー
  • スクリュー冷凍機
  • ガスヒートポンプエアコン(GHP)
  • スポットエアコン

 

<6つの義務>

管理者には下記の6つの義務が設けられています

  • 機器を適切な設置し使用環境を維持する義務
  • 機器に対して簡易・定期点検を適切な頻度で行う義務
  • 修理や廃棄などの履歴を記録し保存する義務
  • フロンが漏えいした際に国に報告する義務
  • 機器からフロンが漏れた場合に適切な対応をする義務
  • 適切な方法でフロンを回収し廃棄する義務

 

業務用エアコンの点検義務について

業務用エアコンの点検義務について

業務用エアコンの点検には2種類あり、それぞれ内容や点検をする人についてもフロン排出抑制法で定められています。

 

・簡易点検

簡易点検は、3か月に1度以上の頻度で行うことが義務付けられています。点検する人は専門資格を有していない人でも可能で、一般的に所有者が行うことが多いです。対象となるのはすべての業務用機器で、異音、摩耗やさびなど外観の損傷や異常、油漏れと熱交換機器の霜の付着などの状態を確認することが定められています。

 

・定期点検

定期点検は、第一種特定製品のうち、一定規模以上の機器が対象です。製品のスペックによって点検の頻度は異なり、点検をする人も第2種冷媒フロン類取扱技術者の有資格者しかできないので、一般的には専門業者に依頼することになります。

圧縮機の電動機出力 定期点検の頻度
7.5kw以上50kw未満 3年に1回以上
50kw以上 1年に1回以上

 

第一種特定製品かわからない場合は、室外機の銘板やシールを確認してみましょう。フロン排出抑制法によって銘板やシールには第一種特定製品であること、使用されているフロン種類・冷媒番号・数量(kg)などの記載が義務付けられています。銘板やシールの位置は製品によって異なるので、もしわからない場合は、メーカーや販売店に直接問い合わせるとよいでしょう。

 

・もし点検を怠るとどうなる?

先述の通り、点検は義務であり怠ると罰金が科されます。

違反事業者には都道府県知事からの勧告などの命令を経て、従わないことを罰する間接罰が規定されましたが、令和2年以降はより罰則が強化されました。一番重たい罰則では、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されるため、必ず簡易点検と定期点検を怠らないようにしましょう。

また、点検後の記録も改正により、破棄後3年間の保存が義務付けられています。行政からは指導、勧告、命令の順で指導されますが、それでも従わない場合は50万円以下の罰金が科されることがあります。

漏えい量の報告を行わなかった場合は、10万円以下の過料が科されるので注意しましょう。

 

・フロンガスの漏えいが疑われる3つのサイン

フロンガスの漏えいが疑われるサインとして、「冷暖房時に冷風・温風が出ない」「室外機の配管や熱交換器の一部に霜が付着している」「室内機の熱交換器の一部に霜が付着している」の3点があります。

漏えいしていた場合は速やかに該当機器の部位を特定し、修理をしなければなりません。漏えいがある状態では、フロンの充填も禁止されているので、サインがあった場合は早急に修理してください。

 

・漏えいしていた場合

該当機器の修理以外にも、漏えい量が合計1,000トン以上の場合は報告が必要です。漏えいしたフロンの量をGWP(地球温暖化係数)で換算する計算式は下記のとおりです。

( 充填量(Kg) – 機器整備時の回収量(Kg) ) x 地球温暖化係数(GWP) ÷ 1,000 = フロン類算定漏えい量(CO₂-t)

なお、漏えい量の報告だけでなく、管理者の情報や漏えい状況なども併せて報告しなければなりません。

 

点検後の保存義務について

空調機の点検・修理やフロンガスの充填・回収などを行うと、機器1台ごとに履歴の記録と保存をしなければなりません。

ここでは、保存が必要なものについて解説します。

 

<3年間保管しなければならないもの>

委託確認書…フロン回収行程管理票のA票

再委託承諾書…フロン回収行程管理票のB票(間に別の業者が入る場合に必要)

委託確認書兼引取証明書…フロン回収行程管理票のE票

 

<機器の廃棄まで保管しなければならないもの>

漏えい点検記録簿…適切な危機管理のため、点検・修理、冷媒の充塡・回収等の履歴を記録するためのもの。点検時に整備業者等が求めた場合は当該記録を開示しなければならない。

 

<できれば機器の廃棄まで保管したほうがいいもの>

充填証明書…充填業者が30日以内に管理者に提出する書類

回収証明書…回収業者が30日以内に管理者に提出する書類

 

点検対象外でも点検はすべき!

点検対象外でも点検はすべき!

使用している製品が第一種特定製品ではない場合、定期点検は義務ではありません。しかし、やっておくことでさまざまなメリットが得られます。

 

・フロンの漏えい防止対策になる

簡易点検での確認項目は、外観に関するものばかりであり、資格がない誰でもできるものです。そのため、わかりづらい異変を見逃す可能性も考える必要があります。また、簡易点検だけではフロンの漏えいはわからない点にも注意が必要です。定期点検でなければ、フロンの漏えいを調べられません。

有資格者に点検を依頼することによって、わかりづらい場所までチェックしてもらえるため、常に安心して製品を使うことができるようになります。

 

・故障の早期発見につながる

仮に定期点検でフロンの漏えいがなかった場合でも、目で確認できない場所やわかりづらい場所が故障している可能性があります。故障は放置しても直ることはなく、悪化する一方なので、早期に発見して修理することで、修理費用を抑えられる効果も期待できるでしょう。

有資格者による細かなチェックにより、定期点検時に異常がないかを調べられることもメリットです。

 

・社内外への環境活動としてアピールできる

昨今は世界的に環境への関心が高まっています。そのため、企業も環境活動に力を入れるようになり、社外や消費者へのPRにも使われるようになりました。

しかし、環境活動には時間と費用がかかるものが多く、なかなか取り組めないということもあるでしょう。

業務用エアコンの定期点検であれば、業者の規模や事業内容を問わず取り組めるので、企業として気候変動や脱炭素経営の取り組みのアピールにもつながります。

 

まとめ

フロン排出抑制法に定められているように、業務用エアコンには簡易点検と定期点検の両方が必要です。しかし、定期点検は第2種冷媒フロン類取扱技術者の有資格者でなければ行えないため、信頼できる業者に依頼しましょう。

エアコン総本店は、業務用エアコンの豊富なノウハウと実績によって、企業様ごとに適切な対応が可能です。さまざまな資格を所有する技術力の高いスタッフが在籍しており、定期点検も安心してお任せいただけます。業務用エアコンのことなら、ぜひ一度エアコン総本店にご相談ください。

参考URL:
フロン排出抑制法の概要(METI/経済産業省)
環境省_「フロン排出抑制法」ポータルサイト
フロン排出抑制法 | 地球環境・国際環境協力 | 環境省

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